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2007年5月23日水曜日

プリニー・サン・ピエール


















プリニー・サン・ピエール Pouligny-Saint-Pierre

まるで富士山を思わせるような形をしたチーズです。
底辺が正方形で、その一辺がピッタリ8cm、
斜に登ると高さが9.5cmもあります。
北斎の富嶽三六景を想わせる美しさです。

このような形は、プリニー村の教会の鐘から着想したと言われています。
昔、木片とライ麦わらでこのような形を作り、水切りをしていたそうです。
プリニー・サン・ピエール村のあたりは、森と草原の中に、
数えられないくらいの小さな池や沼が点在しています。
山羊たちが湿り気を含んだ草や木の芽を喰み、
やがて香り高い良質のチーズを村の人たちに恵んでくれています。
近くにあるヴァランセーのフロマージュとは、兄弟のようなものです。

2007年5月9日水曜日

ヴァランセイ


















ヴァランセイ(Valencay)のチーズは、
昔、ベリーの国を流れるアンドル川の村で、
百姓女が、お菓子を作るピラミッド型 の箱を使って、
チーズの上澄みを切ったことからできたといわれます。

上部をカットして現在の形(台形)にしたのは、
ヴァレンセイ城城主タレイラン(1754-1838)に負うところが大きいということです。
タレイランといいますと、外交のフランスを代表する歴史的な人物です。
タレイランはナポレオンの信任を得て外務大臣として大活躍し、
ナポレオン後の戦後処理の会議で、
フランス外交の才能を遺憾なく発揮した外交官です。
この会議は<会議は踊る>と言われたほどに
歴史にその名を残した会議でした。

ヴァランセイは<タレイランのチーズ>と形容してもよく、
実際味わいは、外交官にふさわしく爽やかでエレガントです。
この地方に多い草原、桃の木、たでやまおうぎ(まめ科草本で飼料用)が、
山羊のミルクに、この上もない素晴らしい香りを恵んでくれるのです。
ヴァランセイは木灰入り塩で塩付けされますので、表皮は黒く輝いています。
少なくとも10日間の仕上げ行程を経て、
商品化される前に、地下保管室に5週間は置かれます。
ヴァレンセイの村(2700人)を訪れましたら、フロマージュを味見した後、
是非タレイランの想い出がいっぱいのお城を訪問したいものです。

2007年5月1日火曜日

サント・モール


















サント・モールのチーズを切ると、
ナイフが一本の麦ワラに当たります。
初めての人は、何かの間違いではないかと思うはずです。
じつは、これこそサント・モールを知らしめる特徴なのです。
一本の麦わらは、型からチーズを出して(Demoulage)、
中心に差し込まれます。
ワラはライ麦で、ワラの中には、チーズ名と製造者証明ナンバーが、
レーザー光線の技術で刻まれています。
これはサント・モールの品質を保証し守るためです。
また、型作りの前の塩漬けでは、
<木灰の入った塩>を使いますので、表面は黒っぽくなります。
サント・モールが口に優しいのは、ゆっくり凝固させることや、
冷涼で風通しの良い湿気のある乾燥室(Haloir)で、
少なくとも十数日間寝かせるからです。

中世時代初期、
南からロワール河に迫ってきたサラセン(アラブ)民族は、
732年、ツール・ポアチエの戦いで敗退を余儀なくされましたが、
この時アラブ女性たちが、村人たちに、
たきぎの形をした山羊のチーズの作り方を教えたといわれています。
放牧民族であるサラセン人たちは、
食料源の山羊を連れて、長期遠征をしていたに違いありません。
ツール地方での山羊の飼育は、この時代から始まっているのです。
ツール市(パリ250km )は、ロワール河の左岸にある
アンドル・エ・ロワール県(Indre-et-Loire)の中心都市で、
サント・モールは、この県の名産になっています。